「もうここなら大丈夫かな」
彼はあたしの手を離した。
それから、泣いているあたしを抱きしめてくれた。
「怖かっただろ…もう大丈夫だよ」
彼の優しさに、あたしの涙は止まらなかった。
「…どうして、あ たしを、助けてくれたの…?」
「お前が、好きだから、ついからだが動いちゃってさ」
たとえこの言葉が、彼を傷つけることになっても、構わない。
「あなたには、あたしよりふさわしい人がいるよ…あたしのことはほっといて」
彼の幸せが一番だから。
「…分かった」
「…ありがと」
彼は俯いてた。
胸が、ズキンと痛む。
「じゃ、じゃあ、あたしこれで…」
「…なんて言えるわけねーだろ!」
彼の腕に、包まれた。
温かくて、気持ちよかった。
「そんなんでお前を諦めらんねーよ!」
「っ?!」
彼の唇が、あたしの唇に優しく重なる。
「お願いだから、嫌いなら嫌いっていってくれ…!」
彼が苦しそうな表情をしてる。
…もう彼に、全て打ち明けてしまおう。
そう思った。
「嫌いなんかじゃないよ…」
「じゃあどうして…?!」
「あたし…赤ちゃんが産めないの…!」
言ってしまった…。
でも、後悔なんてしてないよ。
「それが?」
彼の返事は以外だった。
「そんなの、気にしないし」
「え…?」
「だから、俺はお前がいいんだよ!他の人となんて考えられない!」
「…」
「赤ちゃん、産めなくてもいい。俺は
お前がいいんだ!」
君の精一杯のプロポーズ。
あたしの心に届いたよ。
「結婚して下さい…」
「…ッハイ…」
あたし今、笑えてる?
きっと、笑えてると思う。
だって人生で、一番嬉しかったもの。
あたし達はもう一度、甘い口付けを交わした。

