「辛かったら、なんでも言えよ」




耳元でそう言うと、夕美が頷いたのがわかった。




「よし、じゃあ夕美のお母さんも待ってると思うし・・・・・行くか」




「うん」




本当は、夕美をずっと俺の腕の中に閉じ込めておきたい。




どこにも行かないように、どこにも行かせないように。




この手を離したら、夕美が消えてしまいそうで怖かった。






「じゃあ、お見舞い待ってるね、健ちゃん」




夕美は最後に車の窓から顔を出してそう言うと、車は発進した。




大丈夫、夕美はどこにも行かない。




絶対に、死なない。




その日の翌日から、夕美の闘病生活が始まった。