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全てを茜色に染める夕焼け。


校舎から騒々しさが消え、
静寂に包まれた頃。


俺は廊下を歩いていた。


普段は何気なく通る廊下も、
なんとなく歩いたことのない道に見えた。





高校1年の秋。


もうすぐで、冬が来る。




中学の頃とは違い、毎日の日々も足早に過ぎていく。


そんなふうになんとなく寂しさを覚えると、
無意識に教室の前まで到着していた。






「紗季・・・?」






窓側の一番後ろ。


一つだけ他の列からあぶれて並ぶ席に
ちょこんと座る紗季がいた。


オレンジに反射して輝くピアスが
その存在感を強調させる耳にはイヤホン。


俺がふいに呼んでしまったのも、
紗季には聞こえていないようだった。





ふっと静かに笑った俺は、
ゆっくりと歩いて紗季の隣に座る。


それでも気付かず、
ただじっと窓の外を見る紗季を見て、

情けないけど、少しムッとした。




俺に気付かないとか、ありえねぇ・・・。




びっくりさせようと思って
後ろから驚かせようとしたけど、やめた。


オレンジに染まる紗季が、とても愛おしく思えたから。