“変に思い出させたりしたら”?何のことだ?


『なんだよ・・・。それ』


〈ラック!修平はまだ・・・っ!!〉


『“思い出す”って・・・。なんのことだよ!?』


〈なんだ。知らなかったの?紗季は今、修平のことなんか全部忘れてるんだよ〉


『は・・・?』


〈記憶喪失・・・っていうやつね。
 妖精界でもよくあるけど、人間界にも存在するものなのね〉


イリアが口を挟んだ。


修平はイリアの言葉に絶句した。


紗季が記憶喪失!?


そんなこと起こり得るのか?


よりによってどうして紗季が・・・。


〈そういうこと。だから修平。修平は紗季には会えない。
 会えないならずっとここにいたほうがマシだよ。
 紗季を想うなら、諦めるべきだと思う。だから俺はやらない〉


〈ラック。どうしたんだよ。言いすぎだぞ。
 修平が知らなかったのはしょうがないじゃないか!!
 お前、最近おかしいだろ。そんなのラックじゃない〉


〈それは俺のセリフだよ。
 リーフだって・・。今のリーフはリーフらしくないじゃないか!
 俺らは人間じゃないんだ。考え方が違ったって何もおかしくないだろ!?〉


〈やめなさいよ。2人とも。誰が一番辛いと思ってるのよ。
 あんたたち2人が言い争うことじゃないわ。

 決めるのは、修平でしょう?〉


イリアにそう諭され、リーフとラックは押し黙った。


イリアは修平に向かって真剣な眼差しを向けていった。




〈修平。あなたが決めなさい。
 その子を一番わかっているのはリーフたちじゃない。
 あなたでしょ?〉


グレーの瞳が修平を鋭く捉える。


修平はその瞳をそらさずに見つめ、拳を堅く握りしめた。