ピリッと張り詰めるような気配を感じ。


ラックは遠くを見つめた。


なんだろう。


強い力が一箇所に集まっているような・・・。


目を閉じると、先よりも強く、その気配を感じる。


〈・・・修平?〉


修平の気配を微かに感じた。


近くにリーフもいる?それに、別な気配もある。


これは誰だ?懐かしいようなこの気配。


この気配に会ったことのあるような・・・。


ラックはフェンスを越えて風を体いっぱいに受け止めた。




≪リーフ?聞こえる?≫

     *

≪ラック!?今どこにいるんだ!?≫

     *

≪学校・・。修平の学校の屋上。リーフは?≫

     *

≪バス停。今から大事な話があるんだ。こっちに来てくれないか?≫

     *

≪・・・分った。今行くよ≫





ラックは頭の中の通信を切り、後ろを振り返った。


フェンス越しに紗季の姿を見る。


いつの間に泣いたのか、紗季は頬に涙を伝わせて眠っていた。


〈行ってくるよ。君の大事な・・修平がいるかもしれないんだ〉


「しゅ・・・へい・・・」


記憶は消えようとも、紗季の中の根底には、
きっと修平が存在しているんだろう。


涙を流し、無意識に呟いた紗季を見て、
ラックは紗季にそっと手をのばした。


「しゅうへい・・・」


弱々しく、消え入るようなその声を聞き、
ラックはのばしかけたその手をひっこめて、静かに笑った。




〈紗季に触れられるのは、きっと修平だけだ・・・〉




ラックには、この胸のモヤモヤが何なのか、知る由もなかった。


ただ1つ、この感情は、


紗季が修平に感じているもどかしさと同じものなのかもしれないと、
ふとそう思えたのだった。