「修平。上着、返すよ」
「・・・ばーか。お前熱あんだから着とけよ。俺は大丈夫」
「あ・・そう。修平は馬鹿だから元気だもんねー?」
「はいはい。紗季はほんと、俺がいないとダメだな」
「な、に言ってんの!?別に修平がいなくたって・・・・」
〈紗季、ダメだよ〉
『ラック・・・?』
〈お願いだから、気付いて・・!!〉
バスが発車して、ラックは力いっぱい叫んだ。
〈早く修平に伝えて!!〉
「・・・そっか。紗季は強いな・・」
「うん。だからあたし・・・」
〈紗季!!〉
「あたし・・・・本当は・・・」
〈俺の声を聞けよ・・・っ!!!〉
―あたし、本当は修平が・・・―
「危ない!!紗季・・・っ!!」
静かに降りしきる雪が、この瞬間とても綺麗に見えていた。
修平にはこんなに、こんなにはっきり聞こえるのに、ラックの声は、紗季に届くことはなかった。


