今朝、修平が降りたバス停にラックはいた。


口を尖らせながら降り積もる雪を踏んでいると、時折キュッと音がなることに興味津々で夢中になっていた。


〈何で追いかけてこないのさー!?〉


空に向かって叫ぶラックの声は誰にも聞こえない。


ラックはここが人間界であり、ここで自分と話が出来るのはリーフと修平だけだということに、改めて気付かされた。


〈この手に・・・大きな力が・・・?〉


自分の両手を見つめ、ラックはぽつりと呟いた。


そんなラックの耳には聞き覚えのある声が聞こえていた。


「修平、バスが来る時間まであと30分あるよ?」


〈紗季だ!〉


ぱっと顔をあげると、遠くから修平と手を繋いだ紗季が見えた。


2人の後ろにリーフの姿を見つける。


ラックは思わずホッとした顔をしたが、リーフと目が合うとうつむいた。



「雪、結構降ってんなー」


「雪だるま、作れるかな」


「そういえば、去年作ったんだっけか」


「修平・・・覚えてたの!?」


「ああ。楽しかったしなぁ。紗季といると何でも楽しいし、クラス離れるとか惜しいよな」


修平が白い息を吐きながら話し始める。


紗季は自分の体温がさらに高まったことに気付き、そっぽを向いた。


「そうだね。修平は馬鹿だし、子供のまんまだし。あたしも・・・・」




〈楽しかったの?〉


途中で口を噤んだ紗季に、ラックが聞いた。


修平はその声に反応し、横目でちらっとラックを見たが、何事もなかったように口を開いた。