バスの中の乗客は、修平と紗季を含めて5人だけだった。


1人はサラリーマンの男性。もう2人は修平と同じ制服を着た
男子高校生だった。


そんなひっそりとした車内にはもう2人・・・。


空いている席からひょっこりと顔を出した2人の男の子は車内をぐるぐる見回していた。


〈なぁ。ラック。さっきから何見てんだよ〉


エメラルドグリーンの瞳をしたほうがそう呟いた。


〈ねぇ、リーフ。あの2人、仲良さそうだね〉


ラックと呼ばれたほうが青い瞳を揺らしてリーフと呼ばれたほうに答え、指をさす。


リーフがラックの指を辿っていくと、その先にあったのは修平と紗季が互いに寄り添うように寝ている姿だった。


〈どうでもいいけどさ、くっつくなって。ここは広いんだから〉


〈なんでさ?リーフって照れ屋なんだ?〉


〈うるさい。怒るよ?〉


〈ちぇー。・・・なぁなぁ、近付いてもいい?〉


〈はぁ・・・。好きにしろよ〉


この会話が聞こえていないんだろうか?


サラリーマンの男も、他の高校生も、もちろん寝ている2人も。
誰も気にすることなく、相変わらずひっそりしていた。


ラックがゆっくりと修平と紗季に近付くが、2人は寝たままだ。


〈なんかこいつ・・・。リーフに似てる―・・・〉


そう面白そうに笑うラックの言葉に、リーフではない声が返ってきた。


「は・・・?」


〈え・・・?〉


〈・・・・・・っ!?〉


驚いた顔が3つ、そこにあった。それまで小声で雑談をし、リーフとラックの会話には
目もくれなかった男子高校生たちが修平を一瞥したが、それでも車内は静かだった。