4月だというのにこの地域はまだ肌寒い。桜の木に開化した花はなく、今か今かと咲く時を待つ蕾が群がっていた。

ファーストフード店もゲームセンターもない田舎に生まれ育って15年。高校1年、春、あたしは頭の悪い地元の高校に受かることができた。



外はまさに入学式日和で清々しいほどの晴天だった。肌に刺さる冷たい空気とまだ道端に残る名残雪に身が引き締まる。

まだ皺のない制服と傷も汚れもない値札がついたまんまの鞄。あたしは値札の存在に気付いて、慌てて引き千切りポケットに詰め込んだ。

時間通りに辿り着いた、これから毎日通う学校を見上げて緊張した。

「瑠璃、クラスどこだった?」
「あー…、あ!あたし3組だ!」
「チビで見えないんで、あたしのも探して下さい」
「ぷっ。ゆめ、小学生並だし仕方ないかー……と、5組だ」
「ありがとー!つか、別々になったね」
「そうだねー。まあ、一生会えない訳じゃないんだしさ」
「それもそうだ」

あたしと瑠璃は幼稚園からの幼馴染みだ。今日も一緒に登校した。喧嘩の数は数えきれないほど、相手の生活リズムも知り尽くしている家族同然のような関係だ。