ハジメテノキモチ【短篇】


マリちゃんと呼ばれたその子はすぐに自分で地面に手をつき、ふらふらとだが立ち上がり

「大丈夫~?」

そう言って駆けつけてた母親にむかって


――にぱっ


満面の笑みを見せた。



(あれ……痛く、なかったのかな?)



ぼんやりと見ている僕の視界の中、マリちゃんはまた駆け出す。

そして、また転ぶ。

おぼつかない足に、頭が大きくてバランスの悪い幼児の身体は走るのも容易ではないだろう。

だけどマリちゃんは走る。

何度か転びながら。

だけど泣くこともなく、きゃっきゃと可愛らしい笑い声まで上げながら……

まるで転ぶことすら楽しんでいるように。