ハジメテノキモチ【短篇】


平日の午前中、人気の無い公園。

「待って! マリちゃん」

不意に耳に飛び込んできた、まだ若い女性の声に目を泳がすと。

公園の入り口の方からよたよたと走ってくる小さな人影。

ぱっと見、男女の区別もつかない赤ちゃんといってもいいほど小さな子供が、おぼつかない足取りながらも意外に速いスピードで、母親の手元を離れて遊具へむかって駈けて行く。

なんとなく目で追っていると

「あっ!」

母親の小さな叫び声と同時に、物凄い勢いで……

地面に向かってダイブした。

(あ~、痛そう)

顔から思い切りすべりこむように転んだ様子に

(泣くかな?)

そう思ったのだが。