アパートは公園の近くにひっそりと立っていて、管理人は冴えない青年がやってる。今時の洒落たところはお高いので、色々妥協した結果の住まいだ。


……まあ、管理人さんとはまともに話したこともないんだけど。


誰にも見つからないように、細心の注意を払いながら階段を駆け上がり、部屋へと急ぐ。


無事部屋までたどり着くと、すぐにコートの中から黒猫を出した。身体はすっかり冷えきってしまっている。


「部屋を温めて、はやく拭いてあげなきゃ」


バタバタと部屋の中を慌ただしく動き回る。洗面所からバスタオルを持ってきて、濡れた黒猫の体を、優しく拭いてあげる。



「いい子にしててね。すぐ終わるから」


黒猫はやっぱりじっとこっちを見ていてーーそれから、信じられないことが起きた。



『可愛いし、胸大きいし、優しいし、よし……決めた』





ねねね、ねね、ね、猫がしゃべった!?