明け方まで練習は続き、
果てるように……
悠生さんのプライベートスペースに倒れ込んだ。



あれだけ激しい音を出しているのに、
煌貴くんは、泣きもせず……熟睡。

音が止まったら、大泣きする大物。

「流石、晴貴と煌太の子やぁー」って
成実は練習が終わった後、笑ってた。




そのまま数時間の仮眠を経て、
煌太さんの車で家まで送って貰う。


家でシャワーを浴びて
学校への支度をしたら、
慌ただしく駆け出して、学校へ。

講義の間は睡魔との格闘。

気を許せば、
遠い国へ意識が旅立ってしまうそうなのを
必死に耐えながら、ノートにメモを取っていく。

今日の講義が終われば、
また電車に乗り込んで、移動して向かうのは
そーすけさんの入院する病院。




大きなエントランスを通って、
二階へ続くエスカレーターを登っていく。

そこからエレベーターに乗り換えて、
そーすけさんが入院してるフロアーまで
辿りつくと、ナースセンターの来客名簿に、
名前を記入して病室の前まで行く。



コンコン。



ドアをノックすると……
暫くして、そーすけさんの声が静かに響いた。



「こんにちは」

「こんにちは」




最初の言葉は、変に意識しすぎて
どうしていいかわからなくて、
もう何の飾り気もない言葉。


病室の中に入ると、
ベッドサイドのパイプ椅子に
ゆっくりと腰掛ける。



「そーすけさん、調子は?」

「うん。
 そろそろ退院出来そうだよ。

 流石に、そろそろ離れたいかな」

「そっか。
 退院決まりそうなんだ。
 良かった」



ストレス性の潰瘍で
入院中のそーすけさんはベッドの上で
退屈そうに笑った。