「彩巴、そうっ。
さっきの高音部、綺麗だったよ。
彩巴もやれば出来るんじゃん。
出してて気持ちよかったでしょ?
高音が得意なら、
美空の歌、どれだけでも来いって感じになるんじゃん。
ねぇ、煌太・悠生」
成実が鍵盤に触れた手を休めて、
そのまま二人に視線を向ける。
「煌貴、ソファーで寝かせて
ちょっと煌太、リズム入れてよ。
リズム隊はそろってるんだしねー。
ギターは、私だから
そんなに旨く出来ないけど
実際の雰囲気、感じてみるといいよ」
成実はチャキチャキっと指示を出すと、
ピアノから離れて、
壁に飾られているギターを一本おろす。
アンプにクサっと繋げて、
すでに音の調弦を始めてる。
それぞれにドラムの調整、
ベースの調弦を始めていく光景は
私にとっては凄く新鮮で、
その場に立ち尽くす時間すら、
私の知らない空白の時間を
埋めていくようで楽しかった。
この場所に……
そーすけさんが居てくれた、
もっと嬉しいのに……。
その日……三人の演奏に
圧倒されながら、初めて……歌った
美空さんの最期の曲。
高音が続く優しいメロディーライン。
透き通るような、
真っ白な歌詞。
そして……時折、
キュンとするような言葉がちりばってる。