「そんなこと思ってないよ。

 俺が昔のことを
 話さなかっただけだから……。

 それより、まだ休んでて」





ゆっくりと、
布団に中に連れ戻されて
寝かされた私の隣、
そーすけさんは……
ゆっくりと自分の体も横たえた。





ゆっくりと回される腕。





その腕枕に、
頭を乗せて……すっぱりと、
そーすけさんの体に包まれる。







部分的に触れ合う素肌が
そーすけさんの体温を伝える。



そーすけさんの息遣いが……
鼓動が……私の体を狂わせていく。











……やっぱり……
離れるなんて出来ないよ。










この場所は
こんなにも暖かいのだから。 








「ほらっ、彩巴……
 もう少し寝なよ。

 彩巴が寂しくないように
 抱いててやるから。

 朝になって、落ち着いたら
 一緒に行こう。

 バイト先の、親父さんとおばさん
 彩巴のこと心配してた」








そーすけさんが、
そうやって紡いだ途端……
現金なもので、
バイト先の店長夫婦が
チラリと視界を横切っていく。







「彩巴……。

 プレギエーラ、
 あの町に二人で行こうか?

 一人なら、何時まで経っても
 帰れないと思う。

 でも……彩巴が居たら、
 一緒に帰れる気がするから。

 その時に……話すよ。

 彩巴が知りたい、
 俺の過去を……」







そーすけさんは、そう言うと
私をギュッと抱きしめたまま、
何もせずに一人、眠りについた。