「成実ちゃん。
 何度言われても、
 俺の意思は変わらないよ」



そーすけさんと呼ばれた人は、
そう言うと、少し寂しそうに
視線を遠のけた。





待って。

話も何も見えないんだけど……。



成実、どうせだったら
出来上がる前に、
私を呼んでほしかったよ。


そしたら……
私今より、少しだけ
居心地良かったと思うの。




机に突っ伏して、
酔いつぶれて
眠りに入ってしまった成実。



「あっ、あの……。
 私……」



言葉を続けることも出来ず、
どうしていいかわからなくて、
思わず立ち尽くす私。


「こんばんは。
 成実ちゃんか名前は聞いてる。

 彩巴ちゃんって呼んでもいいのかな?」


そーすけさんは、
そう言うと、
私をテーブルの席に座りやすいように促した。



「はいっ、メニュー」

「二人でもう少し食べようか?
 請求は、成実ちゃんにまわしてさ」


そーすけさんは、悪戯をするように
笑いながら呟くと、次から次へと
食べ物とお酒を注文した。


レモンスカシュを飲みながら、
唐揚げや、揚げ出し豆腐をつまむ
私の傍で、そーすけさんは
琥珀色の液体を、
次から次へと
飲み干していく。


飲み干した後には、
氷が音を立ててグラスの中で響く。



そうやって……
飲み続ける、そーすけさんが
凄く辛そうに見えて……。



「あっ、あの……」


声をようやくかけれた頃、
そーすけさんは、
ゆっくりそのグラスをテーブルに置いた。



「ごめん……。
 彩巴ちゃん、一人にしちゃったね」

「いえっ。
 私はテーブルのおかず、
 美味しくいただいてましたから」



そう言うと、
彼は、震えだした指先を
隠すように逆の手を添えた。