成実が責め立てる言葉は、
真っ直ぐな刃でしかなくて、
その時間は、何時もと同じように
耐え続ける時間以外の何物でもなくて。




そんな苦痛の時間からも逃げ出すように、
アルコールの残るグラスをひっつかんで、
一気に体内に流し込みながら、
むせ返ったまま、咳き込み続ける。





「ちょっと?
奏介、何?

 何やってんの?」



電話の向こう、成実の声が耳に付くものの
咳き込み続ける体は、
なかなか落ち着いてくれない。



「ったく、アンタね。
 何か言いなさいよ。

 それに彩巴の事、どうするつもりなの?
 奏介は彩巴と付き合ってるの?
 利用してるの?

 はっきりしなさいよ。

 美空先輩だけじゃなく、彩巴まで不幸にしたら
 私は奏介を許せない。

 彩巴と奏介を出逢せた私も
 彩巴に謝らなきゃだけど……。

 でもさ、余計なおせっかいだったかも知れないけど、
 晴貴だったら……多分、同じことしたと思うんだ。

 晴貴も美空先輩も、
 奏介を苦しめたいわけじゃない。

 孤独に閉じ込めて置きたいわけじゃない。
 それだけは確かな思いだと思うから。

 晴貴も美空先輩も、
一番願ってるのは、奏介が幸せだと思うから。

 幸せになりなよ。

 洗いざらい、吐露して
 ちゃんと向き合って。

 
 私が言いたいのは、それだけ」


「……あぁ……」




ようやく落ち着いた咳の後、
疲労感漂う体で、
ようやく紡ぎ出せた返事。




「んじゃ。
 ちゃんと寝て、体も厭って。
 無理しないのよ。

 彩巴の事はちゃんと任せて。
 悪いようにはしないから。

 私は彩巴と奏介に幸せになって欲しいって
 心から思ってるから」



そう言うと、電話はプツリと切れた。