〝あのね、彼に振られちゃった…〟


〝新しい出会いを探せって言われても…いないよ、そんな人…〟


電話してる相手の声は聞こえないけれど、会話の内容は大体想像はついた。


〝でも少し気になる人はいるかな。動物好きで優しそうな人なんだけど…〟


えっ、なんだって?


〝え、名前?名前は確かー〟


ここで突然音声が遠退いた。
映像を見ると寝室からキッチンの方へ移動していく美咲さんの姿が見える。


しまった…!
キッチンまで音声は拾えない。


動物好きで優しそうな人なんて言われたら猫を通して出会った僕の事だと期待してしまうじゃないか。


思わず身を乗り出してただただ画面を見守る。


暫くしてマグカップを手に寝室へ戻ってきたものの、気になる人の話題は既に終了していた。


女子ってなんでいつもこうやってすぐ話を脱線させちゃうんだよ!


〝話聞いてくれてありがとう。少し元気になった。…うん、おやすみ〟


通話が終わり間も無くしてベッドに入った美咲さん。


消灯し映像が暗闇に包まれたのを見届けて、僕も就寝する事にした。


けれど動物好きで優しそうな人の正体が気になり、結局眠りについたのは日付けが変わる頃になってしまった。