「【サキちゃんにヤキモチ妬かせよう大作戦】でーす」



「……」


もうこれ以上話すのもバカバカしくなったオレは無視を決め込んで、トレーを持って厨房へ向かう。

望月は慌てて後を追いかけてきた。


「なぁなぁなぁ。マヒロ君って!」


トレーを洗い場のカウンターに置いて、オレは勢いよく振り返った。


「うぜぇ。お前と話してると頭痛くなる」


自分でもわかってる。

オレは今望月にちょっとした八つ当たりをしているんだ。

正直、最近ではもう無理なのかな……なんて半分諦めかけたりしてる。

オレは厨房でボールを抱えて何かを泡立てているサキをチラリと見た。


サキが鈍感だとかそういう問題じゃなくて。

そもそもアイツがオレに惚れるなんてことが、もうあり得ないんじゃないか……とすら思えてくる。

今だってこうやってジッと見つめているのに、オレの視線になんてまるで気付かないんだから。


「ふーん。ま、いいけど」


ようやく諦めてくれたのか、望月がポツリと呟いた。

だけど、ヤツの次のセリフでオレはさらに平常心を保てなくなってしまうのだった。


「サキちゃんが他の男にもってかれてもいいんやったら……それでもいいけどな」




「他の……オトコ?」