オレに一歩近づき、訴えてきたかと思ったら、今度はシュンと肩を落とすテンシちゃん。


「ホテルにでも泊まれって言われたんだけど。そんなお金持ってないし……」


うーん。

どうしたらって言われてもなぁ……。

解決策はいくらでもあるっしょ。

ホテルったって、カプセルホテルとかなら安いし。

後はカラオケ屋とかネカフェとかさ……。

この街には一晩を過ごす場所くらい、いくらでもあるんじゃない?


なんて考えをオレはとりあえず飲み込んだ。


じっと彼女の顔を覗き込む。

小さな顔に長い睫毛に縁取られた黒目がちの大きな目。

桃色の頬にぷっくりとした柔らかそうな唇。

透明感のある色素の薄い肌に白いダッフルコートがよく似合っている。


よく見ると、結構可愛いな。



――決めた……今夜のお相手。



オレは小首を傾げて、とっておきの営業用スマイル(実は下心たっぷり)で言った。



「オレんち……来る?」