「ええ! そんなの無理無理無理無理!」


――テンシちゃんだ。


いったい何度“無理”を連呼するんだ?

テンシちゃんは携帯片手にかなり緊迫した様子で叫んでいる。


「だから、困るってば! あたし今日どうすればいいの! ちょ……アイちゃんってば!」


どうやら、そこで相手から電話を切られたらしい。

うらめしそうに携帯をじっと眺めていた。



「テンシちゃん。どうしたの?」


オレが声をかけると彼女はビクッと体を震わせて振り返った。


「アマツカです!」


あはは……。

こんな状況でも律儀に否定してら。


「で? どした? 何かあったの?」


腰をかがめて、小柄な彼女の目線と合わせる。

テンシちゃんはしばらくためらってから、ゆっくりと話し始めた。


「ルームメイトが……。突然……彼氏を部屋に入れるから、今日は帰ってこないでって……」

「ふーん」

「あ……あたし、どうしたらいいんでしょうか?」