それはあたし達の家に帰るにはあまりにも高い運賃の切符だった。


「ほらっ。いくぞ」


「へ? どこに行くんですか?」


スタスタと歩き始めたマヒロさんの後をあたしは慌ててついて行く。


「どうせヒマなんだろ? 誕生日だっつうのに。しょうがねぇから、一緒に過ごしてやるよ」


マヒロさんは切符を改札に通しながらあたしの方を見もせずにそう言う。


何……、その言い方。

なんだか嫌味っぽいなぁ。

たしかに、誕生日だからといって、誰もお祝いしてくれるような人いないけどさ。


あれ?

でも、たしか……あたしなんかよりマヒロさんの方が……。



「あたしはいいですけど。マヒロさんこそ用事があったんじゃないんですか? 親戚の法事なんでしょ? だから望月君に休み代わってもらったんですよね?」


「はぁ?」


そこでピタッと足を止めると、マヒロさんはあたしを振り返った。

片方の眉を上げて、こころなしか頬がピクピクと震えているような……。



「なんでオレがわざわざ休み取ったかわからないわけ?」