それからしばらくして、新生児室のガラス越しにあたし達も赤ちゃんと対面することができた。


「女の子ですね……」


あたしは隣にいる佐伯さんに声を掛けた。


「うん」


そう言う佐伯さんの目は真っ赤だった。

きっと出産に立ち会って泣いちゃったんだと思う。

佐伯さんは大人で冷静な人だとばかり思ってたけど、こんな一面もあったんだな。


やっぱりマヒロさんが言ってた通りだ。

仕事を選んだからといって、奥さんや赤ちゃんを大事に思っていなかったわけじゃなかったんだね。


あたしはまた視線を赤ちゃんに戻した。


産まれたばかりの赤ちゃん。

見ているだけで自然と笑みがこぼれる。

ただそこにいるだけで周りを幸せな気分にさせてくれるようなそんな存在。

自分の子供でもないのに、なぜか愛しくてしょうがない。


「爪もちゃんとあるんだぁ……」


そんなことに感動しているあたしに、マヒロさんがクスリと笑った。


「サキと同じ誕生日だな」


「うん。そうですね。……って、え? マヒロさん、あたしの誕生日知ってたの?」


「昼間、ユミコさんと話してじゃん」


「ああ……そっか」


あの時、マヒロさん話聞いてたんだ。


そっか。

あたしと同じ日に産まれた赤ちゃん。



“おめでとう”


あたしは口をパクパクさせてスヤスヤと眠っている彼女の寝顔にそっと呟いた。