体がガタガタと震え出した。

指先が冷たくなる。

その指先をギュと握りこんでいたら、あたしの手をマヒロさんが横から包み込んでくれた。


マヒロさんは何も言わずにずっとあたしの手を握っていてくれた。

その大きな手に包まれていると、不思議と安心して……


ずっとこうしていたいな……


なんてそんなことふと考えたりしていた。




どれぐらいの間、そうしていたんだろう。


薄暗い廊下の向こうからパタパタと走ってくる音が聞こえた。


佐伯さんだ。

ひどく慌てて来たのだろう。

コートのボタンは互い違いに留められ、髪はいつもより乱れていた。


佐伯さんはあたし達にお礼を言うと、すぐに分娩室に入っていった。



やがて、佐伯さんが来るのを待っていたかのように、元気な産声があたし達の耳に届いた。


「産まれたの……?」


「ああ……」


なぜだかわからない。

自分でも理由の見つからないような涙が後から後から零れてくる。


「泣き虫ぃ~」


マヒロさんはからかうようにそう言うとあたしを抱きしめてくれた。


「良かった……。ホッとしたよぉ……。マヒロさぁああああん」


あたしはマヒロさんの胸の中でまた泣いた。

「ん。良かったな」

マヒロさんはそんなあたしの背中をポンポンと優しく撫でてくれた。