自分でもすっかり忘れていた。

明日、3月15日はあたしの誕生日だ。


「クリスマスも年末もバレンタインもお休みあげられへんかったから。せめて誕生日ぐらいはゆっくりして?」


ユミコさんはそう言ってにっこり微笑んでくれた。


「ありがとうございます」


へへ……。

なんかうれしなぁ。

誕生日にお休みをもらえるなんて。

といっても、これといって何か特別にお祝いしてもらう予定もないんだけどなぁ……。

それよりもユミコさんがあたしの誕生日を覚えていてくれたことがなんだかうれしくてくすぐったい。



「ボケッとすんな」


ペチンと額を叩かれた。

いつの間に側にいたのか、目の前のカウンター越しにマヒロさんが立っていた。


「はい。オーダー」


指に挟んだオーダー票をヒラヒラとさせてあたしに差し出す。


「今日はめずらしくケーキ食べるってさ」


マヒロさんは客席を親指で差しながら言った。

その視線の先にいたのは……。



「佐伯さん……」