ただ口をパクパクさせることしかできないあたしに、マヒロさんはフフンと不敵な笑みを浮かべてそのまま出て行ってしまった。



「え……」
「ええええええええええ!」


残された事務所内では、望月君とユミコさんの大絶叫が響き渡った。




「ちがっ……ちがうんです! 誤解です! あたしとマヒロさんは、べべべべべつに何もやましいことはなくって……」


「そんな必死に弁解せんでもええって。店内恋愛は自由やで」


望月君があたしの肩にポンと手を乗せた。


ユミコさんも笑いをかみ殺したような不自然な笑顔でウンウンと頷いている。


二人とも絶対面白がってる。


「ち……」


「違うんですうううううううう!」あたしの悲痛な叫び声が響いた。


あたしの頭にはさっきのニヤリと笑ったマヒロさんの笑顔が浮かんでいた。


悪魔だ……。


マヒロさんは悪魔だぁああああああ。


もう……ヤダ。


マヒロさんなんて嫌いだぁ……。