あたしは抵抗する間もなく両手首を押さえつけられていた。

マヒロさんの香りがして息がかかる。

顔のすぐ上でマヒロさんの低い声が響いた。



「やっぱ気が変わった」


その声は低くて色っぽくて……あたしの心臓はバクバクと暴れ出す。

暗闇でもわかる。

マヒロさんはじぃっとあたしの顔を覗き込んでいる。



「……ヤラせて?」


「なっ……」


――ドクンッ

と心臓が脈打つ。


「何言ってんですか!」


あたしはマヒロさんの下で唯一自由に動かすことのできる足をジタバタとさせた。


やっぱりマヒロさんは危険人物だっ!

ひどいよ……油断させといて、襲うなんて。


「やめてくださいっ」


押さえ込まれた両手に力を入れてみるものの、ビクともしない。


マヒロさんの顔がどんどん近づいてくる。

キスされるんだ……。


「やだッ……」


あたしは体をカチコチに固まらせて目を閉じた。