マヒロさんの部屋の前で待つこと数分。


チャイムを鳴らしてみたけどなかなか出てこない。

あたしはかじかんだ手にはぁと息を吹きかけると、もう一度インターフォンのボタンに手をかざした。


と、その時。


「はい」


インターフォンから聞こえてきたのはマヒロさんの声。

なぜかその声に心臓がピクンと撥ねて緊張してきちゃう。

あたしはチョコをもう一度ギュッと握り締めた。


「こんばんは。あのっ……」


「ああ、ちょっと待ってね」


声だけでわかったのかな……。

ガチャガチャという音ともに、ドアが開いてマヒロさんが中から顔を出した。


「マヒロさんっ!」



あたしは開きかけたドアに手をかけると、かなり強引にズカズカと玄関の中に割って入った。

その剣幕に押されているかのように、マヒロさんは後ずさりする。



「マヒロさんっ……これっ……」


両手で持ったチョコをマヒロさんの目の前に差し出す。


「あ……気づいた?」


あたしはコクンと頷くとさらに体を彼に近づけた。

マヒロさんの体温が感じられるぐらい近く……。


「マヒロさん……これってつまり……」



――ピチャン

その時あたしの頬に水滴が落ちてきた。



「って、きゃああああああ!」