サキの返事も待たずオレは彼女の肩に腕を回して引き寄せ……

そして……そっと口づけた。


それは触れるか触れないかぐらいの微かなキスだった。


我ながら『らしくないな……』なんて思いながら、サキから体を離した。



「な……な……な……」


一方のサキは真っ赤な顔で目をパチパチさせている。


「マヒロさん! だめですってば! こういうことは好きな子にしかしちゃダメです!」

「ハイハイ」


オレはサキに背を向けると、コートのポケットに手を突っ込んで足早に歩き始めた。


正直、もうまともに顔が見れるような状態じゃなかった。

情けないけど、オレも今、サキに負けず劣らず顔が真っ赤だと思う。


サキはそんなオレの気持ちなんてまるで気づいてない様子で、慌ててパタパタと追いかけてきた。


「あ……そう言えば、あのチョコどうしました?」

「ああ……あげたよ」

「え? ホントですか? じゃ、本気で好きな子ができたってことですか? うわあああ。良かったですね!」


サキはまるで自分のことのようにうれしそうにはしゃいでいた。

静かに降り続く粉雪が彼女の頭に降り積もって、まるで雪の結晶で作られたティアラのようだった。


サキと一緒にいると、寒いのに……なんだか暖かくて……くすぐったくて。

冬もそう捨てたもんじゃないな――なんて思ったりして。