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仕事を終えたオレとサキは店を出て歩きだした。


「あ……」


手をかざし、空を仰いで呟くサキ。


「雪……」


オレも同じように空を見上げる。


吸い込まれそうな漆黒の闇から真っ白な粉雪が舞い降りてくる。

オレは視線をサキに向けた。

雪のように白いダッフルコートに身を包んだ彼女の姿が闇に浮かんで、そこだけがリアルじゃないような気がした。


あの日キッチンで見たのと同じように、彼女の周りだけ優しい光で包まれているような、そんな錯覚すら起きる。

この世に天使が存在するとしたら、ひょっとしたらこんな姿をしてるんじゃないだろうか?


なんてバカな考えが頭をよぎって、オレはなぜか無性に恥ずかしくなってきた。


オレの視線に気付いたサキが急にこちらを向いた。

そのせいでオレの心臓はビクンと跳ね上がった。


「マヒロさん、ありがとう」

「何が?」

「色々と……」


そう言うサキにオレは体を近づけた。


「じゃ、お礼もらっちゃおうかな」

「え……」