ma cherie *マシェリ*


新幹線に乗り換える駅で、家に電話をかけた。


お母さんは呆れながらも笑って許してくれた。


「お父さんには上手く説明しておくから大丈夫」とも言ってくれた。


ほんとに大丈夫なのかと、ちょっと心配だけど……。




ホームで新幹線を待っている時、ふいにマヒロさんがあたしの顔を覗き込んできた。


「そういや、荷物はどうすんの? お前、財布持ってきてないって言ってたじゃん」


実はあたしは財布を家に置き忘れていて、

マヒロさんを見送るために駅に入る時の入場券代、

ここまで来るための電車賃、

それから新幹線のチケット代までマヒロさんに借りてしまったのだ。


ほんとあたしってつくづく忘れ物が多い……。



「さっき電話した時に、アパートまで送ってもらうように言っておいた」


「ふーん。じゃ、今日発送したとして、届くのは明日か」


「うん」


マヒロさんはあたしから顔をそらして、線路の方を眺めている。



「で、鍵は?」