「気に入っていただけたみたいで……ありがとうございます」


サキはペコリと頭を下げると、レシピの書いた紙を佐伯さんの奥さんに手渡す。

そして作り方を簡単に口頭で伝えた。


「ご丁寧にありがとう。さっそく作ってみますね」


そう言って頭を下げた拍子に奥さんの肩からストールが床に落ちた。


側にいたサキはそれを拾って奥さんに手渡す。


そして奥さんの大きなお腹を見ながら言った。


「あの……予定日はいつ頃なんですか?」


「来月なのよ」


奥さんは愛しそうにお腹を撫でる。


「そうなんですか……。わたしも三月生まれなんです」


「そうなんだ。一緒ね。でも、もうすぐだっていうのに、まだ名前も決めてないの」


「キミは優柔不断だからなぁ……。決められないんだよな」


「失礼ねー」


奥さんと佐伯さんは仲良さげに言い合ってる。


「何か良い名前あるかな? そうだ。あなたのお名前は?」


奥さんはサキのことが気に入りでもしたのか、優しく尋ねた。


「サキです」


「サキちゃん……可愛い名前ね」


「ああ……良い名前だね」


二人はまた顔を見合わせて笑う。

ほんとうに仲の良い夫婦なんだな……。

まるで幸せのオーラが見えるような気がした。