「あたしね。子供の頃、雲は綿菓子みたいな甘い味がするんじゃないかな……っておじいちゃんに言ったの」


「うん」


「そしたらね。おじいちゃん、『じゃ、夜空の星は金平糖の味がするのかな?』
って言って、あたしの手のひらに金平糖を乗せてくれたんだ。
おじいちゃん、あたしが言うバカみたいな話にもいつも同じ目線で接してくれた。
ふふ……。
マヒロさんと同じ発想でしょ? 『星、食ってみれば?』なんて言うんだもん」


「はは。たしかにな」


「ここね。じつはおじいちゃんとの秘密の場所なの。
あたしがお父さんに叱られて落ち込んでる時に、よく連れ出してくれて、ここで星空を眺めてたんだ。
おじいちゃん以外の人と一緒に来たのはマヒロさんが初めてだよ?」


「それはどーも」


ってマヒロさんは答える。


そしてうーんと腕を伸ばして伸びをする。



「けど、今度は親父さん、連れてきてやれよ」


「え?」


「きっと喜ぶよ。オレさっき、話してみて思ったんだ。すげー、お前のこと大切に想ってくれてるじゃん。
『サキをお願いします』……ってオレ、頭さげられちゃったし。
良い親父さんじゃん」


「うん。じゃ、こんどお父さんと一緒に来るね」


「そうしろ」


マヒロさんは満足そうに微笑んでポンとあたしの頭を撫でた。