ma cherie *マシェリ*


「いえいえ。あたしも方向音痴だから気持ちわかります」


そう言うと、彼はハハッと白い歯を見せて笑う。

いつの間にか軽そうな最初のイメージはすっかりなくなってしまった。


きっと良い人なんだろうなぁ……って思う。


「あ……でも」


とあたしは振り返る。


そういえば、マヒロさんに『ここ動くな』って言われてたんだよね。


大丈夫かな……。

東門はすぐそこだから、急いで行って帰れば、2分もかからないかな。

最悪、時間がかかりそうなら、携帯で連絡すればいいか。


そう思って

「じゃ。行きましょう」

とあたしは足を進めた。