ma cherie *マシェリ*

「あの子は……早産で、予定よりも1ヶ月以上早く産まれたんだ。
他の赤ちゃんと比べると、本当に小さくて細くて……。
保育器の中にいるサキを見て、無事に育つんだろうか……って、僕はそんな不安を抱えていた。
おまけに3月生まれなもんだから、今でこそ追いついたけど、小学生の頃は他の同級生の子よりずいぶん成長が遅れてて……。
当時は体も弱くて、学校も休みがちだったんだよ」


たしかにそうだった。

特に呼吸器系が弱くて。


小さい頃は何度か入院したこともある。


そう言えば……。

思い出した……。


たしか小学1年生の頃だったと思う。


夜中に喘息の発作を起こしたあたしを、お父さんが背負って病院まで連れていってくれたっけ。


あの時のお父さんの背中の温もり……今でも記憶に残っている。




「そうだったんですか……」



「ああ。そのせいもあって、周りの人間はサキに甘くてね。
特に親父は、自分の子供が男ばかりだったせいもあって、初孫であり女の子であるサキを溺愛しててね。
僕はそれを見て、心配していたんだ。
このまま育つと、心も体も弱い子になるんじゃないか……って」



「だから、憎まれ役をかって出たってわけですか?」