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それから数日経ったある午後のこと。


「あ……今日はソファ席に座りたいんだけど……あいてるかな?」


いつものように窓際の席に案内しようと思ったオレを、佐伯さんが呼び止めた。


「ええ。空いてますよ」


オレは佐伯さんをソファ席へと案内した。

ここは窓際ではなくキッチンのすぐ側だ。

ソファが居心地良いためかカップルが好んで座る人気のある席なんだけど、今日はたまたま空いていた。


佐伯さんはソファに深く腰掛けると、いつものようにブレンドを注文した。

そして手にしていた洋書を読み始める。


――そう、いつもと同じ。

だけどいつもとは何かが違う。

オレは嫌な予感がして、胸がざわついた。



一方、サキの方はキッチンの近くに佐伯さんが座ってくれたことに、かなり喜んでいた。


「佐伯さんに、チョコ……渡すの?」


オレはカウンターの外から、あからさまに浮かれているサキに尋ねた。



「はい……。実は、渡そうと思ってます。気持ちを伝えるなんてそんなのは無理だけど……。せめてあたしの作ったチョコレート食べて欲しくて」


そう言って、真っ赤になって俯いているサキを見ていると、なんだか胸にチクリと棘が刺さったような気分だった。


報われぬ想いを抱えているサキに同情してなのか……

それとも別な理由でオレは今胸が痛いのか……


自分でもよくわからなかった。