「いいんじゃない?」


オレの疑問にアイちゃんはしれっと答えた。


「あ……そ」


シェーカーを振りながら店内を見渡した。

リアナはこの店の常連客として、アイちゃんと知り合ったのだとか。

そしてさらにアイちゃんを通じてサキとも仲良くなったらしい。


オレは三人分の酒を作って、それぞれに差し出した。

それから、カウンターの端っこにちょこんと座っているサキの方を向いた。

後は彼女だけだ。


「さて……何飲む?」


オレに顔を覗き込まれた彼女はビクンと肩を震わせた。

さっきからずっと心ここにあらずって感じでぼんやりしてる。

ま、サキがボケっとするのは今に始まったことじゃないけどね。


「えと……別に……あたしは」


「何でもどうぞ? じゃ、どんな感じのがいい? リクエストある?」


「リクエスト……。 何でも聞いてくれますか?」


サキはやっと顔を上げてオレを見つめる。


「ああ。いいよ」


「あの……じゃ……もう一回言ってもらえますか?」


「は? 何を?」


「……さっきの……」


真っ赤な顔で再び俯くサキ。


「なんか……まだピンとこないっていうか……マヒロさん、ホントにそうなのかな……ってさっきからずっと考えてたんです」


彼女の言いたいことはなんとなくわかった。

ちょいちょいと人差し指で手招きすると、サキは恥ずかしそうに、だけどちょっとだけ期待のこもった顔を近づけてきた。

オレは彼女の耳に唇を寄せるとフッと息を吹きかけてから甘く囁く……。