「どうしてでしょう……?」


オレは、はぁ……とわざとらしいぐらいの大きなため息をついた。


「教えてやろうか?」


「え……」


何か言いかけた彼女の顔にオレの影がかかる。

唇が触れた瞬間……まるで時が止まったような感覚に陥った。

この世界にオレ達二人しかいないんじゃないか……なんて妙な錯覚を起こしてしまった。

目を開けたまんまパチパチさせて驚いているサキ。

オレはそんな彼女の唇からオレの唇をそっと離した。


「これで……わかった?」


サキはフルフルと顔を横に振る。


「アホか……」


オレはポツリと呟いた。


その途端、またブワッてサキの目には涙が溢れる。


「どうせ、あたしはバカですよぉ……もう、どうしたらいいか自分でもわかんないんだもん」


「バカ。ほんと……お前って、バカすぎ」


サキはむっとした表情でオレを睨む。

んな顔しても全然迫力ねぇけど。


「わかってます! 自分でもわかってますよ! でも、そんな何回も言わなくてもいいじゃないですか!」



オレは片手を伸ばしてサキの肩を抱いて引き寄せる。


「嫌うわけねぇだろ……んな、可愛いこと言われて」