外はまだ小雨が降っていた。

アスファルトに溜まった水をパシャパシャと撥ねながら走る。


アイちゃんが言っていたとおり、公園にはサキがいた。

ブランコの囲いに持たれるように立っている彼女を園内の外灯が照らしていた。


オレは彼女に近づいていって、傘を差し出した。


雨粒が自分の顔に当たらなくなったことに気づいたサキが驚いたように視線を上げた。


「わっ……ビックリした」


「んな、露骨に驚くことねーだろ」


「驚きますよ! 声ぐらいかけてください!」


さっきまで泣いていたのがウソみたいだ。

いつものサキに戻っていた。


「大丈夫か?」


オレはサキの顔を覗き込んだ。


「アイツから色々聞いたよ……。初恋の相手のこととか……。今もトラウマになってんだろ? だからさっき……」


「違う……」


オレの言葉を遮って、サキが顔を上げた。

じっとオレを見つめる。


誰もいない静かな公園。

ただパラパラと傘に落ちる雨音だけが頭上で響いていた。


「……と思います……」


サキは自信なげにポツリと呟く。


「違う……って何が?」


「なんでもないですっ!」


そう言うと、プイとオレから顔を背けてしまった。