「や……だ……」


サキはそのままズカズカと部屋の中に入ってきて、オレ達に近づく。


「やめてよ! アイちゃん、やめて!」


そして崩れるようにしゃがみこむと、アイちゃんの体をオレから引き離そうと必死に押している。


「ハイハイ。冗談だよ」


そんなアイちゃんの言葉とともに、オレの体は解放された。

サキは真っ赤な顔のまま、ポロポロと涙を流している。

子供みたいにヒクヒクと嗚咽を漏らしながら。


「サキ……?」


オレが声をかけると、サキはハッと表情を変えた。

慌てて涙を拭う。


「ごめんなさいっ。なんかあたし……取り乱しちゃった。ちょっと頭冷やしてくる……」


そう言うと、スクッと立ち上がり、また部屋を出て行ってしまった。


パタンとドアが閉まった瞬間、アイちゃんが口を開いた。


「“効果絶大”」


なぜか望月が言っていたのと同じキーワードがアイちゃんの口から漏れたことが気にかかったが、今はそんなことに気を取られている場合じゃない。

オレは体を起こして彼を睨み付けた。


「どういうこと?」