サキは口から泡吹いて倒れるんじゃないかってぐらい、動揺しているご様子。


「ん――あたらずとも遠からず?」


オレはあえて疑問系で、まるで他人事のように答えた。


「そんなの間違ってます! ひょっとして、ちゃんとした恋愛したことないんじゃないですか?」

「はぁ? ちゃんとした恋愛ってなんだよ? 教えろよ?」

「たっ……例えばですね。まずは好きになって……告白して……それから付き合って……デートして」


うっとりした目で“理想の交際”を語り始めるサキ。

なんなんだ、その型にはまった夢見がちな発想は……。

ひょっとして処女なのか?



「それで手繋いで……何度目かのデートでキスして……それから……それから」

「それから? ナニすんの?」


オレはわざと体を近づけ、壁際にいる彼女をさらに追い詰める。

両手を彼女の顔の脇について、逃げられないように囲った。


さっきから蒼くなったり赤くなったり、表情がくるくる変わって、見てるだけでも面白い。


「あっ……あとは別にいいじゃないですか! とにかく恋愛には手順ってもんがあるんです!」


熱弁を振るうサキを見てオレは確信した。

――処女決定……だな、こりゃ。

もうちょいからかってやろっと。


オレは右手で、まだ湿っているサキの髪を触った。


「手順ねぇ……。教えてよ。もっと詳しく」