その日もオレと望月は早上がりだった。

時刻は夕方6時。

「飯でも食いに行くか」なんて話しながら着替えを終えて更衣室から出ると、偶然にもそこにはサキがいた。


「あれ? サキちゃんも今日早上がりやったん?」


私服姿のサキに望月が声をかける。

サキはなぜか妙に驚いて、ビクンと肩を震わせる。


「あ……はい。シフト変えてもらったんです」


「へぇ。じゃ、飯でも食いにいかへん? オレら今から行くとこやねんけど」


「えっ」


一瞬……ほんの一瞬だったけど、サキがチラリとオレの方を見た。

だけどすぐにその顔を逸らす。


「いえっ。あの……今日はちょっと予定があって……ごめんなさい」


オレの方を見もしないで、しどろもどろに答えながら頭をペコペコと下げている。


「じゃ、お先に失礼します」


よっぽど急いでいたのか、パタパタと小走りで事務所を出て行ってしまった。



「何だ? 今の……」


思わず呟くオレ。

なんかわかんねぇけど、サキの態度にすげぇむかついてた。


「今、露骨にオレから目ぇ逸らしたよな?」


同意を求めるオレに、望月もバツが悪そうに「んー……まぁ、そうやなぁ……」と苦笑いしながら首の後ろをポリポリと掻いている。


「ああ、もー! ムカツク!」


何なんだ、サキのやつ……。

オレに興味がないどころか、実は嫌ってんじゃないのかって、そんな気さえしてきた。