それから一週間ほど経ったある日のこと。

その日の空は、まるでオレの心をそのまま映し出したかのように、どんよりと厚い雲に覆われていた。

天気予報では晴れだったのに、午後から急に曇ってきやがった。

この様子だと夜には降り出すかもしれない。

そんなこと考えながらため息まじりに窓の外を眺めた。



なんでそんなに気分が落ち込んでいるかっつうと……


例の王子がやって来ているからだ。



彼は相変わらず熱い視線をサキに向けている。

サキの方も時々その視線に気付いては、恥ずかしそうにうつむいたりしている。


もう決定なのかな?

この二人の関係は……つまりカレカノなのか?


そんなこと考えて悶々としているオレの肩を誰かがポンッと叩いた。


「何?」


オレは憮然とした表情で振り返った。


「あいつの素性がわかったで」


望月が王子の方をチラチラと見ながらオレに耳打ちする。


「3丁目の交差点にある、“Adonis”(アドニス)ってバーあるやろ?」


「ああ……」


「あそこのバーテンやって」


「へぇ……」


なるほど……バーテンね。

それなら彼が真っ昼間のこんな時間にやたらとやってくるのも納得がいく。

店が開くのは夜からだろうから、昼はヒマしてるってわけか。

こんな美少年がシェーカー振ってんだから、さぞやその店は女性客で賑わってるんだろうな……なんて容易に想像がつく。


それにしても、バーテンとなるとますますサキとの接点が理解できない。

サキがバーに通うほど、酒好きだとは思えない。

バーテンとパティシエがいったいどうやって知り合ったんだろう……。



オレの疑問は増すばかりだった。