う……。

思わず言葉につまったオレに、彼女はクスクス笑ってる。


「リアナ」


「え? リ……ナ?」


「リ・ア・ナ。せめて名前ぐらい覚えておいてよね」


「ああ。覚えておくよ」


「じゃ、あたし帰るね」


そう言うと、リアナはオレのシャツの襟元を掴んで、ぐいっとオレを引き寄せる。


その力は驚くほど強くて、オレは思わず前かがみになった。


呆気に取られているオレの頬に彼女の唇が触れた。

音を立てて軽いキスをすると、彼女は体を離した。


「ほっぺぐらい良いでしょ? 大丈夫、このことはマヒロ君の大事なサキちゃんには内緒にしておくから」


にっこり微笑むと、オレに背を向け、「じゃぁねー」なんて言いながら手をヒラヒラさせて立ち去っていく。


その後ろ姿を眺めながら

「いい女だよなぁ……」

オレは一人、ポツリと呟いた。


ちょっと惜しい事したかな……なんて思ったりして。