「なるほどねぇ……」


今のサキとのやりとりだけで、全てを察したんだろうか。

彼女は腕を組んで、一人で納得していた。


しばらくそうしていたが、おもむろに鞄から何かを取り出す。


「はい。忘れもの」


女が差し出したのは、オレの学生証だった。


わざわざこれを届けに来てくれたんだろうか。

これを見たからオレの誕生日とかがわかったんだな、きっと。


「サンキュ……。あと……ごめんな……昨日のこと……」


オレはもう一度謝った。

昨夜の軽率すぎる行動。

謝って許されることじゃないかもしれないけど、オレにはそうするしか出来なかった。


「別にマヒロ君が謝ることないんじゃない? あたしは嬉しかったし。まぁ……お酒のせいで記憶なかったのは残念だけど」


彼女はあっけらかんと答えた。


「昨日のことは忘れてあげる」


そう言って、オレの首に腕を絡める。


「その代わり……」


彼女が顔がどんどん近づく。

やがてその目が閉じられ、悩ましげな声が口から漏れる。




「キスして?」