「ダメですよ、飲みすぎちゃ! 明日もシフト入ってんですから!」


その言葉にオレは力を失って、スルスルとサキの手首を解放した。


「じゃ。合コン頑張ってくださいね」


サキはこれ以上ないぐらいの満面の笑みを浮かべると、そのまま事務所に入っていった。


パタンとドアが閉められた音がした瞬間、まるで魂を抜かれたかのように脱力したオレは、ヘナヘナとその場に座り込んだ。


膝を抱え込んで顔を埋める。

今度は“撃沈”と書かれた石が頭に乗っかっていることだろう。



「ま……マヒロ君、大丈夫?」


頭上から望月の声がした。

こころなしか声が震えている。

心配してるのか?

いや、違う。

笑いたいのを必死で堪えているような声だ。


「ぷっ……」


とうとう噴出しやがった。

引き笑いしながら、オレの肩をポンポンと叩く。


「ひぃ……。まっ……マヒロくっ……だ、大丈夫? くっくっ……」


「うるせ。何が“効果絶大”だっつの」


オレは誰にも聞こえないような声でポツリと呟く。

「いてぇ……」

心臓痛ぇし……。

何かで握りつぶされたみたいだ。

つか、彼女の言動にいちいち振り回されてる自分もそうとう痛いヤツだよな……。


くそぉ……。

なんかむかついてきた。

だいたいこんなのオレのキャラじゃねぇ。

オレはスクっと立ち上がり、まだ腹を抱えて笑っている望月に声をかける


「いくぞ」


サキのやつ……。

何が「飲みすぎちゃダメ」だ!

こうなったらとことん飲んでやる!

女の子と遊び倒してやる!

合コンキング復活だっつの!