「うわぁっ……」


 眼前に広がる光景に、自然と感嘆の声が漏れた。


 一言で言えば、巨大ショッピングモール。


 ブティックやカフェ、レストラン、シネコンまでが立ち並んでいる。


 それなのに人気が全くなく、不気味だった。



「出入り口はA-13だ。覚えておけ」


 イシザキが出てきた扉を指す。


 周りを見ると、同じような扉が幾つもあった。


 自分だけの専用通路だと思うと、不思議な気分になった。



「あっ……待って!」


 イシザキの後ろ姿が遠ざかり、わたしは慌てて追いかけた。


 途中、遊園地のような施設があった。


 巨大滑り台にジェットコースター、メリーゴーランド、プールなどが見える。


 ピエロの人形がゲートに立っており、こちらに向かって手招きしていた。



「……っ!」


 わたしは誘拐されたときのことを思い出し、身体がすくみそうになった。


 それにしても、地下なのにあらゆる設備が整えられている。


 太陽も空もないのに、公園には芝生や木々や花まで植えられていた。


 ここがタウン……。


 想像を絶する世界に圧倒され、わたしは絶句した。


 でも、誰もいないのは何で……?



「スクールに通える者はほんの一握りだ。ここの連中は独占欲が強く、部屋から出させない」


 前を歩くイシザキがわたしの心を読んだかのように言った。



「じゃあ、こんな施設があっても意味がないんじゃ……」


「ふん。想像力が足りないな。客や職員が利用するんだ」


 イシザキは鼻で笑うと、さらに言葉を続けた。



「中には自分が買った少女とデートを楽しみたい物好きや、タウンに泊まりがけでやって来る客もいる。だが、自由に出歩ける少女はほぼいないに等しい」


「……」


 こんな偽りの地下街で一生を過ごさないといけないなんて、考えただけで頭がクラクラしてきた。


 殺されるのとどっちがマシか……。


 もちろん死にたくはないけど、こんな所にずっといたら狂ってしまうだろう。


 でも……生きてさえいれば、必ずチャンスはあるはず。


 最後まで諦めない──。

 
 わたしはプラス思考に切り替えて、挫けそうになる自分を戒めた。