部屋の電気が消える。


 しかし、今度は両手を固定されることも、目薬をさされることもなかった。


 モニター画面に映像が映し出される。


 目隠しをされた裕太が上半身裸で横たわっていた。


 青い首輪を着けられ、鎖に繋がれている。



「……裕太っ!」


 わたしは反射的に身を乗り出して、モニター画面を食い入るように見つめた。


 あんな姿にさせられて、かわいそうに……。


 心配しながら固唾を飲んで見守っていると、カツカツとヒールの音が近づいてきた。



『ハーイ、ロミオ。いい子にしてたネ?』


 可愛らしい声とともに、すらりとした艶かしい脚が画面の端に映り込む。


 裕太の買い主の“リン”は若い女だった。


 はっきりと姿は見えないけど、深いスリットの入った赤いチャイナドレスを着ている。



『まだ眠ってるネ。ワタシと遊ぶヨ、ベイビー』


『うぅ……ッ』


 ハイヒールの爪先で軽くつつかれ、裕太は低い呻き声を漏らした。


 緩慢な動作で身体を起こすと、ヒビ割れた壁に気だるそうにもたれかかった。



『ワタシの可愛いロミオ。シャワーを浴びて、さっぱりしたネ?』


『……は……』


 裕太が口を動かし、かすれた声を出す。



『萌は……どうしてる? 声を聞かせてくれるって、約束した……』


 苦しそうに息継ぎをしながら言うと、裕太はガクッとうなだれた。


 体力がまだ戻っていないのだろう。



「裕太! 聞こえる? わたしだよ……萌だよ!」


 わたしは涙を堪えながら、画面に向かって声を張り上げた。


 その声が届いたのか、裕太がゆっくりと顔を上げる。



『萌……。萌なのか……?』