“やってもらうこと”って何だろう?


 何か嫌な予感がする……。


 わたしは食欲を失いかけたものの、腹が減っては何とやらだ。


 これ以上体力が落ちたら、病気になってしまうかもしれない。


 裕太もきっと、買い主に食べ物をもらっているだろうし……。


 そんな理由づけをして罪悪感を拭い去ると、わたしは毒々しい色の林檎を丸かじりした。


 こんな質素な食事でも、胃が小さいからなのかすぐに満腹になってしまう。


 歯磨きを終えてバスルームから出ると、イシザキが再び部屋の中央に立っていた。


 モニターの前に、肘掛け椅子が用意されている。



「椅子に座れ」


 わたしを見るなり、イシザキは命令口調で言った。


 恐る恐るながら言われた通りにすると、肘掛けにおいた両手をベルトで固定された。



「な……何っ?」


 わたしは不意打ちを食らい、呆然とイシザキを見上げた。
 

 ガチャガチャやっても外れない。



「貴様には映像を見てもらう。目を閉じることも、耳をふさぐことも許されない」


 そう言って、モニターにつないだヘッドフォンを被せてきた。


 さらにイシザキは、わたしの頭を押さえつけると染みる目薬を点した。



「何か……目がおかしい」


「瞬きを少なくして、瞼が閉じられると痙攣を起こすように出来ている。映像から目を逸らしたら、貴様の目玉を針で刺す」


 イシザキが耳元で低く囁き、眼球ギリギリに針の先端を近づけてくる。


 目をつむりたいのに、筋肉が強ばってうまく動かせない。
 

 
「分かったな? 返事をしろ」


「……ハイ」


 わたしは固まったまま、操り人形のように機械的に口を動かした。