そして、イシザキは無言でモニターの電源を落とした。
裕太の姿が画面から消えてしまう。
──大丈夫だよね?
買い手がついたんだから、殺されたり餓死はしないよね……?
不安になって、わたしは意味もなくイシザキを見つめた。
「ロミオに早々とくたばられては、まるで面白くないからな」
事も無げに言うイシザキに、怒りと恐怖が同時に込み上げる。
ここの連中は、人の命を何だと思っているのだろう。
家畜と人間様。
あるいは、奴隷とご主人様。
お金だけで簡単にその歪んだ関係を作り上げられてしまうのだ。
こんなの狂ってる……!
わたしは心底怯えながらも、冷静さを失ってはダメだと自分に言い聞かせた。
オークション中に錯乱状態に陥った少女の姿に、この世界で正気でいることがいかに難しいかを思い知らされたような気がする。
それをしっかりと心に刻まなければ……。
「ジュリエット」
ふいに名前を呼ばれ、わたしはビクッとして身構えた。
イシザキがスッと手を伸ばしてくる。
「よく似合ってるぜ」
わたしの首輪に触れ、妖しげに笑った。
次は何を企んでいるのだろうか……。
内心怯えるわたしから食糧の詰まった紙袋に視線を移すと、イシザキは静かに口を開いた。
「腹は減っていないのか」
「……食べていいの?」
軽い空腹を覚えて、上目遣いに見上げる。
「それは貴様の分だ、好きにしろ。……腹ごしらえが済んだら、やってもらうことがある」
イシザキはそう言い残し、部屋から出て行った。


